0. イントロダクション: バイブコーディングとは何か?
あなたは今、プログラミングの世界で起きている大きな変化の入り口に立っています。
従来のプログラミングは、複雑な構文規則を暗記し、厳密な理論知識を身につけることが前提でした。しかし、バイブコーディングという新しいアプローチでは、あなたが作りたいものを自然な言葉でAIに伝えるだけで、実際に動作するコードが生成されます。
本書では、バイブコーディングを本格的に実践するためのAIツールとしてClaude Codeを取り上げ、完全なプログラミング初心者の方でもClaude Codeを使いこなせるように徹底解説します。実践的な題材としてStreamlitを使ったBIダッシュボードの構築を通じて、バイブコーディングを身につけていただきます。
本書のユニークな点は、以下のとおりです。
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完全なプログラミング初心者の方でもClaude Codeを使いこなせるように、アカウント・環境構築から実際にClaude Codeを動かすまでの流れを丁寧に解説します。
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開発環境として、手元のマシンのスペックやOSに関係なくブラウザから使うことのできる Github Codespacesを提案しています。
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実践的な内容として、Streamlitを使ったBIダッシュボードの構築を一貫した題材として取り上げています。
なぜClaude Codeか?
私はキャリア10年を超える職業エンジニアとして、Claude Codeが現時点で最高のバイブコーディングツールであると確信しています。これから実際に体験してもらう、Claude Codeの特徴や機能のおかげて、他のAIコーディングツールとは一線を画すほど実用的なバイブコーディングが可能です。
Claude Codeの強力な特徴
世界最高峰のコーディング性能を誇るAIモデル
Claude Codeが使用する Sonnet 4 / Opus 4 というモデルはAnthropic社の最新のモデルで、特にコーディング性能において高いベンチマークスコアを記録しています。実際に使っている立場からしても、とても性能の良いモデルだと感じます。
計画を立ててから実行する、エージェンティックな振る舞い
Claude Codeは、ユーザーの指示に対し計画を立ててからステップバイステップで実行することで、ユーザーの意図を正確に反映します。
ターミナルからの呼び出しによる高いコード理解
Claude Codeはターミナルから利用する CLI (コマンドラインインターフェース) です。ファイルやディレクトリ構造の自由に読み出し・書き込みができるため、コードベースを正しく理解した上でユーザーの意図を汲み取った操作をしてくれます。
MCP・カスタムスラッシュコマンドによる機能拡張
Claude CodeはMCPサーバーとの連携をサポートしており、これによりClaude Codeの機能を拡張することができます。また、何度も繰り返すようなタスクに関しては、カスタムスラッシュコマンドという仕組みを使ってルーティン化することができたりと、拡張性が高いのも大きな特徴です。
このような強力な特徴がある一方で、特に非エンジニアの方にとってはClaude Codeは最初の一歩のハードルが高く、ReplitやBoltが注目されやすい現状があります。しかし裏を返せば、このハードルさえ超えてしまえばとてもパワフルなClaude Codeの力を享受することができるのです。
セルフサービスBIの限界とBI-as-Code + Claude Codeが解決する課題
本書では、非エンジニアの方がバイブコーディングに入門する実践的な題材として、BIダッシュボードをコードにより構築する「BI-as-Code」のアプローチを取り上げます。BI-as-Codeは近年注目されている方法論で、多くの企業で導入されているセルフサービスBIツールの課題を解決するものです。
TableauやPower BIなどの既存のセルフサービス型BIツールは、あらかじめ用意されたテンプレートや定型レポートの範囲を超えた分析を行うのは困難です。カスタマイズしたい場合でも、ツールが提供する機能の枠を超えることはできません。
Claude Codeを使ったStreamlitダッシュボードでは、要求を自然言語で伝えるだけで必要な業務ロジックを含むカスタムダッシュボードを作成できます。このように、従来のBIツールでは実現できなかった柔軟性と拡張性を手に入れることができます。
本格的なバイブコーダーになるための5つの道具
本書では、以下の5つのツールを使って実践的なバイブコーディングを学びます。
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Github は、コード管理と共有のプラットフォームです。あなたが作成したコードを安全に保存し、他のメンバーと共有できます。GitHubアカウントがあれば、世界中のエンジニアが使っているのと同じ環境でコード管理を行えます。
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Github Codespaces は、ブラウザ上で動作する開発環境です。あなたのパソコンに複雑なソフトウェアをインストールする必要がなく、インターネットブラウザがあればすぐに開発を始められます。
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Claude Code は、あなたのAIプログラミングパートナーです。自然言語での指示を理解し、適切なコードを生成・修正してくれます。エンジニアでなくても安心してください。難しく感じるかもしれませんが、実際はシンプルです。
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Streamlit は、Pythonでダッシュボードを作成するためのフレームワークです。複雑なフロントエンド技術を学ぶことなく、美しいWebアプリケーションを構築できます。
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Squadbase は、作成したダッシュボードを簡単・安全にデプロイ・共有するためのプラットフォームです。社内システムとの連携やセキュリティ要件を満たしながら、チームメンバーとダッシュボードを共有できます。サーバーのセットアップなどは必要なく、コードをGithubにPushすることで自動的にダッシュボードをデプロイすることができます。
Githubでコードを管理し、Codespacesで開発環境を構築し、Claude Codeでコードを作成し、Streamlitでダッシュボードを実装し、Squadbaseで本番環境にデプロイする。この一連の流れを通じて、あなたは実用的なバイブコーダーになることができます。
本書で作る成果物の全体像とゴール設定
本書を通じて、あなたはECサイトのデータを使った実践的なStreamlit BIダッシュボードを作成します。
学習は段階的に進みます。
- まず環境構築を行い、Claude Codeの基本操作を覚えます
- 次に実際のデータを使った分析を行い、基本的なダッシュボードを作成します
- その後、高度な機能を追加し、最終的にチーム全体で使えるダッシュボードに仕上げます
各章の内容
第1章:アカウントセットアップ
- Claude CodeとGitHub Codespacesのアカウント作成
- 開発ツールへの心理的ハードルを乗り越える方法
- 無料プランの制限と効率的な使い方
第2章:環境構築
- GitHub Codespacesでクラウド開発環境を構築
- Streamlitスターターテンプレートのフォーク
- uvパッケージマネージャーの使い方
- 初回Streamlitアプリケーションの実行
第3章:Claude Codeとの初対面
- Claude Codeの基本的な使い方と認証
- @記法を使ったファイル参照
- CLAUDE.mdファイルの活用
- 効果的な指示の出し方
第4章:データ準備と基本ダッシュボード構築
- CSVファイルを使ったデータ分析
- Pandasでのデータ操作の基本
- Plotlyを使ったインタラクティブな可視化
- 月次売上トレンドとキャンセル率分析の実装
第5章:エラーハンドリング
- エラーを学習機会として捉える考え方
- Streamlitでのエラーの読み取り方
- Claude Codeへの効果的なエラー報告方法
- 実際のエラーを使った実践練習
第6章:高度なダッシュボード機能
- 新しい分析ページの追加(カテゴリ分析)
- データフィルタリングとインタラクティブな可視化
- Streamlitウィジェットを使ったユーザーインターフェース
- 日付選択と期間フィルタリング機能
第7章:複雑な業務ロジックの実装
- 曖昧な業務要件を具体的なロジックに変換
- 探索的データ分析(EDA)の実践
- 問題分解と定量化のテクニック
- エディター選択を使ったClaude Codeとの効果的な対話
第8章:チーム共有とメンテナンス
- Squadbaseを使った安全なデプロイ環境
- チームメンバーの招待とアクセス制御
- 継続的な改善とフィードバック収集
- 分析とランタイムログ管理
本書を完了した時点で、あなたはプログラミング初心者から実践的なバイブコーダーに変化しています。単にダッシュボードを作成できるだけでなく、AIと協働してさまざまな業務課題を解決できるスキルを身につけているでしょう。